フトアゴヒゲトカゲの内視鏡(異物摘出)
こんにちは、もみじ動物病院です。
今回はフトアゴヒゲトカゲで内視鏡を実施した症例をご紹介します。爬虫類、特にトカゲの患者さんで多い症状の1つが、食べてはいけないものを飲み込んでしまう「異物誤飲」です。
トカゲは、動くものや目の前にあるものを口にしてしまうことがあり、餌だけでなく、飼育環境にある小さなものを誤って飲み込んでしまうこともあります。
特に注意したいのが、
- 床材や砂
- プラスチック片
- 小さなおもちゃや装飾品
- 飼育用品の破片
などです。


フトアゴヒゲトカゲのトカゲちゃんです。とても可愛いですね。
トカゲちゃんは、「先ほどプラスチック片を飲み込んでしまった」との主訴で来院しました。
飼い主さんが、誤飲に気付いてすぐに連れてきてくださったため、異物はまだ胃内に留まっている可能性が高いと考えられました。
プラスチック片はレントゲンに写らないこともありますが、念のためレントゲン検査を実施しました。


レントゲンでは、明らかな異物は認められませんでした。
トカゲが異物を飲み込んでしまった場合、異物の大きさや形状によっては、まずは内服薬などで消化管内を通過させ、便と一緒に排出されるのを待つこともあります。
ですが、今回トカゲちゃんが飲み込んでしまったプラスチック片の大きさは、飼い主さんのお話ではおよそ1.6 cmほどありました。飼い主さんが飲み込んだプラスチック片のサンプルを持参してくださったため、実際の大きさや形状を確認することができ、治療方針を考える上で大きな助けになりました。
1.6 cmという大きさは、フトアゴヒゲトカゲの便よりもやや大きく、自然に排出されるのは難しい可能性がありました。体内に残ってしまうと消化管を傷つけたり、消化管閉塞を起こしたりする可能性があります。
自然排出が難しい場合、外科手術でによる摘出や、内視鏡を用いた摘出などの治療方法を検討します。
当院にある内視鏡は犬や猫を対象としたもののため、トカゲちゃんに使用できるかは慎重な判断が必要でした。ですが、内視鏡で摘出できる可能性を考慮し、飼い主さんと相談したうえで内視鏡による摘出を行うことにしました。
内視鏡は全身麻酔で実施します。爬虫類の麻酔はとても難しく、麻酔が効くのにかなりの時間を要したり、麻酔が十分に効かないこともあります。 爬虫類は体温によって代謝が左右されます。麻酔薬を適切に代謝できるよう、麻酔前に保温を行っています。

麻酔を行うところです。イソフルランというガス麻酔を、麻酔導入ボックスの中に充満させます。

手術室の様子です。
哺乳類と比べて波形は取りにくいですが、心電図などの生体モニターも使用します。

麻酔が効いたため、ボックスから出してマスクに切り替え、麻酔状態を維持しながら処置をおこないます。

今回使用する内視鏡です。 内視鏡は、先端に小さなカメラがついた細い管状の医療機器です。カメラで身体の中を観察し、映像をモニターで確認しながら処置を行います。内視鏡の中には器具を通せる細い通路があり、そこから鉗子などを入れて異物をつかんで取り出すことができます。

うつ伏せの状態で、内視鏡を口から挿入します。


モニターの様子です。胃のなかに、白色のプラスチック片が確認されました!

内視鏡内に鉗子を通し、プラスチックをつかめるか挑戦します。
鉗子の口を広げて、、

プラスチック片をつかみます。

つかんだら、体の外に出せるよう引っ張っていきます。

体の外に取り出す際、プラスチック片の棘で食道の粘膜が傷つき出血が認められました。

取り出したプラスチック片です。

処置直後のトカゲちゃんです。処置中、前後通して保温を行います。

処置後10分ほどでトカゲちゃんは覚醒しました。

麻酔から4時間後のトカゲちゃんです。顔も上がり、呼びかけに反応してくれるようになりました。トカゲちゃん、よく頑張りましたね!

こちらが今回取り出したプラスチック片です。
トカゲちゃんが誤飲したのは、フトアゴ用のゲル状フードの容器についていたプラスチック製のリングでした。
誤飲した直後は、普段と変わらず元気に見えることがあります。
しかし、異物が胃や腸にとどまっている場合、時間が経ってから
- 食欲がなくなる
- 元気がなくなる
- 排便が減る・出なくなる
- お腹が張る
- 吐き戻しや嘔吐がみられる
- じっとして動かなくなる
などの症状が出てくることがあります。
異物によっては、消化管を傷つけたり、詰まらせたりする危険もあります。
そのため、「今は元気だから、しばらく様子を見よう」ではなく、誤飲に気付いた時点で早めに動物病院へご相談ください。

