
ワクチンってなに?
ワクチンは、動物を感染症から守る大切な予防診療です。動物は、一生の間にさまざまな感染症にかかる可能性があります。中には、感染すると重い症状を引き起こし、命に危険が及ぶ病気もあります。ワクチンを接種することで体の中に免疫(抗体)がつくられ、病気の感染を防いだり、感染してしまったとしても症状を軽く抑える効果が期待できます。
わんちゃん、猫ちゃん、フェレットさんと暮らす皆さまは、ぜひワクチンでしっかりと病気を予防してあげてください。
外に出ない子にも必要なの?
よくあるご相談ですが、外に出ない、室内飼いの子たちにもワクチンは必要です。外で他の動物と直接触れ合う機会はなくても、ウイルスや最近は人の靴や衣服に付着して室内に持ち込まれたり、窓を開けた時に空気と一緒に入り込む可能性があるためです。
当院でワクチン接種ができる動物
フェレットは院内にワクチンの在庫がない場合があるため、事前にお電話でご確認ください。
犬の混合ワクチンについて
混合ワクチンで予防できる病気
犬の混合ワクチンは、予防できる病気の種類により2種混合〜10種混合ワクチンがあります。数字が多いほど予防できる病気が多くなります。当院では、5種、6種、8種、10種混合ワクチンをご用意しております。ワクチンごとに予防できる病気は、下の図のようになります。

以下に、それぞれの病気の特徴を記載します。
犬ジステンパー
犬ジステンパーウイルスが原因で、発熱や鼻水、くしゃみ、下痢などの症状が出ます。進行すると痙攣や震えといった神経症状が現れることもあり、とても重症化しやすい病気です。
犬伝染性肝炎
犬アデノウイルスが原因で、発熱や元気がなくなる、嘔吐や下痢といった消化器症状などが見られます。重症になると肝臓や肺に炎症が広がり、出血傾向や死亡してしまうこともあります。
犬アデノウイルス2型感染症
犬の呼吸器に感染するウイルスで、「ケンネルコフ(犬の風邪のような病気)」の1つです。主な症状は、乾いた咳やくしゃみ・鼻水などで、軽い風邪のように見えることもあります。ただ、免疫が弱い子犬などは肺炎に進行して重くなることがあります。
犬パルボウイルス
非常に強い感染力と高い致死率をもつ、子犬で特に注意が必要な感染症です。
激しい下痢や嘔吐が続き、短時間で体力を奪ってしまいます。ワクチンで予防できるため、初年度のワクチン接種が重要です。成犬でも重症化することがあるため、定期的なワクチン接種が勧められます。
犬パラインフルエンザ
主に咳やくしゃみなどの呼吸器症状を引き起こす、ケンネルコフの原因ウイルスの1つです。単独では軽い症状で済むことが多いですが、他の病原体と一緒に感染すると悪化しやすくなります。集団での飼育や、ペットホテルなどの利用時に広がりやすい傾向があります。
犬コロナウイルス
主に消化管に感染し、下痢などの症状を起こします。単独では比較的軽いことが多いですが、他のウイルスと同時に感染すると重症化することもあります。
犬レプトスピラ症
レプトスピラという細菌による感染症で、人にも感染する人獣共通感染症です。この細菌はネズミなど野生動物が持っていて、汚れた水や土、傷口、粘膜から体に入って感染します。
発熱や元気消失のほか、腎不全や肝不全を起こすことがあり、黄疸(白目や皮膚が黄色く見える)が見られる場合は重症で、命に関わることもあります。
ワクチンはいつ打てばいいの?
子犬の場合
子犬は、お腹にいたときに母犬からもらった免疫(移行抗体)が残っているため、1回のワクチン接種では十分な免疫がつきません。そのため、移行抗体が弱まり始める時期を見計らって合計3回の接種が推奨されています。

成犬の場合
年1回のワクチン接種を行います。
ワクチンの副反応について(犬・猫・フェレット)
ワクチン接種後に、まれに副反応が見られることがあります。副反応が起こる頻度は、犬で0.94%、猫で1.25%と報告されています。
即時型アレルギー
「アナフィラキシーショック」ともいい、ワクチン接種から数分〜1時間以内に出現します。ぐったりしたり(虚脱)、呼吸困難や低体温、嘔吐などといった症状が出ます。起こる確率はとても低いですが、命に関わることもあり、早急に対処が必要です。
遅延型アレルギー
ワクチン接種後数時間以降にかけて出る反応で、
- 顔の腫れ(ムーンフェイス)
- かゆみ
- 元気や食欲の低下
- じんましん
- 嘔吐や下痢
といった症状が出ることがあります。ワクチン後にいつもと違う様子が見られたら、早急に受診をしてください。
狂犬病ワクチン
狂犬病ってどんな病気?
狂犬病は、人を含む全ての哺乳類に感染しうるウイルス性の病気です。ラブドウイルスというウイルスに感染することで起こり、発症した場合の致死率はほぼ100%という、とても怖い感染症です。
現在の日本では長年発生がありませんが、世界では多くの地域で流行しており、海外からウイルスが持ち込まれる可能性はゼロではありません。
そのため日本では、狂犬病予防注射の接種が法律で義務付けられています。
もし狂犬病に感染したらどうなるの?
残念ながら、狂犬病の治療法は現在ありません。
- 発症すると数日で重い神経症状があらわれる
- ほぼ100%死亡してしまう
- 人にも感染する(人獣共通感染症)
だからこそ、唯一の確実な予防法が「ワクチン」なのです。
狂犬病ワクチンはいつ打つの?
狂犬病ワクチンは、「年に1回」の接種が基本です。
生後91日以上になると狂犬病ワクチンの実施ができます。ワクチン接種後に、注射済票が交付されます。その後は毎年1回、継続して受けてください。
猫の混合ワクチンについて
混合ワクチンで予防できる病気
猫の混合ワクチンは、予防できる病気の種類により一般に3種混合〜5種混合ワクチンがあります。数字が多いほど予防できる病気が多くなります。当院では、3種、5種混合ワクチンをご用意しております。ワクチンごとに予防できる病気は、下の図のようになります。

以下に、それぞれの病気の特徴を記載します。
猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)
猫パルボウイルスが原因で起こる、感染力と致死率のとても高い病気です。感染すると、急に元気がなくなったり食欲が低下し、激しい嘔吐や下痢が見られるようになります。このウイルスに感染すると血液中の白血球が大きく減ってしまうため、免疫力が著しく低下し、重症化しやすいのが特徴です。子猫では特に危険性が高く、早期の予防接種が大切な病気です。
猫ウイルス性鼻気管炎
猫ヘルペスウイルスが原因で起こる感染症です。感染すると、くしゃみや鼻水、目ヤニ・結膜炎など、風邪のような症状が見られます。特に子猫では、元気や食欲が低下したり、細菌の二次感染が重なることで、症状が強く出ることがあります。治るまでに長引いたり、重症化すると命の危険が伴うこともあります。
猫カリシウイルス感染症
猫カリシウイルスによる感染症で、口の中の潰瘍(酷い口内炎のような状態)や、くしゃみ、鼻水などを引き起こします。肺炎を伴うこともあり、重症化すると命に関わることもあります(特に肺炎を起こした場合)。軽症で済むこともありますが、猫風邪の一因ともいわれ、重症化予防のためにもワクチンを受けておくことが重要です。
猫白血病ウイルス感染症(FeLV)
猫白血病ウイルスが原因の感染症で、唾液から感染するため、外に出る猫ちゃんや多頭飼育の環境では特に注意が必要です。
感染して発症すると、白血病(白血球の異常な減少)だけでなく、貧血や免疫力の低下、腎臓病、腫瘍の発生など、さまざまな病気を引き起こすことがあります。中には持続感染(ウイルスが体内に住み続ける)となり、他の猫ちゃんへの感染リスクも高くなります。
猫クラミジア感染症
猫クラミジアという細菌が原因の感染症で、主に結膜炎(目ヤニ・充血)を引き起こします。涙や鼻水を介して広がるため、多頭飼育では特に注意が必要です。症状としては、結膜炎の他にくしゃみや鼻水などの軽い呼吸器症状が見られることもあります。重症化は稀ですが、慢性的に続いてしまうこともあります。ワクチン接種により発症の予防や症状の軽減が期待できます。
ワクチンはいつ打てばいいの?
子猫の場合
子猫は生まれてしばらくの間、お母さんからもらった免疫(移行抗体)に守られていますが、その効果は生後数週〜数ヶ月で少しずつ弱まっていきます。
移行抗体がなくなる時期には個体差があるため、生後6〜8週齢ごろから2〜3回に分けて、生後16週になるまで打つのが一般的です。

成猫の場合
1年〜3年に1回の接種が勧められます。頻度はその子の生活環境や健康状態により変わるため、来院時に獣医師と相談しながら決めていきましょう。
猫の注射部位肉腫について
「注射部位肉腫」とは、ごくまれにワクチンや注射を打った場所にしこりができ、腫瘍へと変化してしまう病気です。発生率は非常に低く(10,000分の1程度)、多くの猫ちゃんは問題なくワクチンを受けられますが、万が一に備えて猫ちゃんと暮らしている方には知っておいていただきたいです。
ワクチン後にしこりができても、多くは数週間で自然に小さくなる正常な反応です。しかし、
- 直径2 cm以上のしこりができた場合
- しこりが3ヶ月以上続く場合
- ワクチン接種から1ヶ月以上経ってもしこりが大きくなってくる場合
は、念のため早急に動物病院を受診してください。
当院では、万が一しこりができたときに対処しやすいように、後ろ足などの下半身にワクチン接種をおこなっています。
フェレットのワクチンについて
フェレットでは犬や猫と同じように、ワクチンで感染症を予防することができます。特にジステンパーは非常に危険で、フェレットに感染すると死亡率はほぼ100%といわれています。そのため、ワクチン接種はフェレットの健康を守るうえで大切です。
予防できる主な病気
ジステンパー
犬のジステンパーウイルスが原因で、フェレットにも感染します。発熱、下痢、神経症状などが現れ、進行が早く命に関わる病気です。
フェレットのワクチンはいつ打つの?
幼齢フェレット
生後間もないフェレットは、母親からもらった免疫(移行抗体)がしばらく残っています。生後6〜12週間経つと移行抗体はほとんどなくなってしまうため、この時期にワクチンが必要になります。生後6〜8週齢で1回目のワクチン接種を行い、その後は3〜4週間間隔で最終接種日が14週齢以降になるように接種します。

成フェレット
年に1回のワクチン接種を行います。
フェレット用のワクチンはあるの?
フェレット用のジステンパーワクチンは日本では販売されていません。ですので、多くの病院では犬用のワクチンを代用しています。当院では、犬の2種混合ワクチンを使用します。


