- 1. ハリネズミってどんな動物?
- 1.1. 針と皮膚の特徴
- 1.1.1. 針がよく抜ける時の注意点
- 1.1.2. 針でわかる気持ちのサイン
- 1.2. アンティング(唾液ぬり)ってなに?
- 1.3. 生物学的な特徴
- 2. ハリネズミの飼い方
- 3. 1. 基本の飼育環境
- 3.1. その他の用品
- 4. 2. 食餌について
- 4.1. 主食(ハリネズミ専用フード)
- 4.1.1. 硬いフードのメリットと注意点
- 4.1.2. 柔らかいフードのメリットと注意点
- 4.2. フードはいつ与えたらいいの?
- 4.3. ハリネズミは口腔内のトラブルが多い動物です
- 4.4. 副食(昆虫・おやつ)
- 4.4.1. 肥満に注意!
- 4.5. 水分
- 5. 3. トイレ・衛生管理
- 5.1. 赤い尿が出たら
- 5.2. 緑の便が出たら
- 6. 4. ハリネズミに必要な日常ケア
- 6.1. 爪切り
- 6.2. 針・皮膚のチェック
- 6.3. 毎日できる健康チェック
- 7. ハリネズミがかかりやすい病気
- 7.1. ハリネズミに多い病気
ハリネズミってどんな動物?
ハリネズミは、背中の針(棘)と、くるんと丸まる防御姿勢が特徴的な小動物です。分類上は「ネズミ」ではなく、モグラに近いハリネズミ科に属しています。一般にペットとして飼われるのは ヨツユビハリネズミ という種類で、ピグミーヘッジホッグとも呼ばれます。
ハリネズミは単独生活を好みます。また、夕方から活動を始め、夜間に最も活発になる夜行性の動物です。ハリネズミの活動時間に合わせて掃除や給餌などのお世話をするとストレスが少なくなります。昼間は静かな環境でゆっくり過ごせるよう、ケージの設置場所にも注意しましょう。
針と皮膚の特徴
ハリネズミは約5000本の針を持つといわれています。頭の真ん中には針が生えていません。この針は被毛が変化したもので、生涯を通じて抜け替わります。
特に「クイリング」と呼ばれる生後6〜8週、生後4〜6ヶ月ごろの幼少期の針の生え変わりでは針抜けが多くみられ、1日に数十本ほど抜けることもあります。
針がよく抜ける時の注意点
針は日常的に少しずつ抜け替わりますが、まとまって抜ける・フケが増える・かゆがるような様子がある場合は、皮膚の病気が隠れている可能性があります。
特にハリネズミでは ダニ(疥癬)や真菌症 が多く、放っておくとさらに範囲が広がることも。環境ストレスや栄養の偏りが原因になることもあるため、いつもより抜け方が多いと感じたら早めにご相談いただくのがおすすめです。
針でわかる気持ちのサイン
- リラックスしている(針は寝ています)
→背中の針がふわっと寝ていて、体も柔らかい状態。 - 少し気を張っているとき(額の針がピッと立つ)
→おでこ周りの針だけが立つ時があります。少し緊張しているサインです。 - 明らかに警戒しているとき(全身の針が立つ)
→体全体の針を立てて、相手に対して距離をとろうとしています。不安や恐怖、不快など、強めの警戒を示します。 - 最大限見を守るとき(体を丸めて針のボールに)
→体をすっぽり丸めて、外側に針を向けた“完全防御”の姿勢。強いストレスや「危険だ」と感じたときの行動です。(動物病院の診察中はほとんどの子が針ボールになります…)
アンティング(唾液ぬり)ってなに?
アンティングは、泡立てた唾液を背中の針などの自分の体に塗りつける行動で、多くのハリネズミにみられる正常な習性です。どうしてアンティングをするのか詳しくは分かっていませんが、新しい匂いや興味のある匂いを「覚える」ための行動と考えられています。よだれが多い・何度も繰り返す・皮膚が赤いなどの場合は病気やストレスが隠れていることもあるため、ご相談ください。
生物学的な特徴
ここでは、ハリネズミの代表的な生物学的特徴をまとめました。
- 寿命:5〜7年
- 体重:オス:400〜700 g
メス:300〜600 g - 体温:36.1〜37.2 ℃
- 心拍数:180〜280回/分
- 呼吸数:25〜50回/分
- 適温:24〜29 ℃(寒さに弱い動物です)
- 適湿度:およそ40%
ハリネズミの飼い方
1. 基本の飼育環境
ケージの選び方は?
ハリネズミは基本的に単独で暮らす動物です。
あまり高いところへ登るのは得意ではないため、飼育環境は「広さ」と「安心できる隠れ場所」が大切になります。
ケージは“広く・低め”が理想
平面的にゆったりと使える広さのあるケージが理想です。スペースが狭いと、どうしても排泄物の上を歩いてしまうことが増えるため、なるべく自由に動き回れる床面積を確保することがポイントです。最低でも60〜90cmサイズのケージを用意してあげてください。
運動できる環境を整える
十分な広さを確保するのが難しい場合は、
- ケージのそとで安全に散歩させる
- 回し車を設置して運動量を確保する
といった工夫で運動できる環境を作ってあげてください。
安心できる隠れ家を
ハリネズミは隙間に入るのが得意です。夜行性のため、日中は落ち着ける場所で過ごしたがります。巣箱やドーム型のハウスなど、体が入って安心できる隠れ場所を用意してあげましょう。
床材の選び方は?
当院のおすすめは白色のペットシーツです。破れたり穴掘りをしない限り誤食などの事故の可能性も低く、排泄物の色の確認がしやすいためです(後述しますが、ハリネズミは血尿が多い動物です)。ただ、穴掘り行動や破れたペットシーツの中にもぐる子の場合は注意してあげてください。
床材として使用されるものには、
- ペットシーツ
- ウッドチップ(針葉樹は注意)
- コーンリター
- くるみリター
- 布
- 牧草
などがあります。どの床材も誤食などの事故には気をつけ、その子に合ったものを選んであげてください。
設置場所は?
- 直射日光が当たらない場所
- 振動・騒音の少ない部屋
- エアコンの風が直接当たらない
- 適温(24〜29℃)を保てる環境
がおすすめです。
その他の用品
- 給水器
- 給餌皿:ひっくり返しにくい陶器など
2. 食餌について
ペットのハリネズミの食事は「ハリネズミ専用フード(高タンパク・低脂質)」が主食です。
主食(ハリネズミ専用フード)
ハリネズミ専用フードをの与え方には、
- 乾燥した硬いフードのまま与える方法
- ふやかして柔らかいフードを与える方法
があります。どちらにもメリットと注意点があります。
硬いフードのメリットと注意点
ドライフードのように、ある程度の硬さがある食べ物を与えていると歯垢が溜まりにくいという説もあります。ただ、ハリネズミは本来、虫を中心に食べる動物で、噛む力はあまり強くありません。なので、硬すぎるフードを与えると
歯が欠けたり(破折)、摩耗したり、歯肉を傷めることがあります。
柔らかいフードのメリットと注意点
缶詰タイプやふやかしたフードは飲み込みやすく、顎や歯肉への負担が少ないという利点があります。その反面、歯に食べかすが残りやすく、歯石ができたり歯肉炎を起こしやすい傾向があります。柔らかいフードの場合、補助的にミルワームなどの昆虫を適度に取り入れると口腔ケアに役立ちます。
また、ハリネズミは偏食することがあるので、普段から数種類の専用フードに慣れておくことをおすすめします。
フードはいつ与えたらいいの?
ハリネズミが活動する、夜に1日1回与えてあげてください。幼齢の場合は足りないので頻度を増やします。投与量の目安は大人のハリネズミで体重の5%程度といわれていますが、体型や年齢にもよります。体重をみながら調整しましょう。体重の相談も承りますので、お気軽にご来院ください。
ハリネズミは口腔内のトラブルが多い動物です
ハリネズミは、歯肉炎や腫瘍などの口腔内の病気が多い動物です。食べにくそうにしたり、口の周りが汚れたり、よだれが増えるのはそのサインかもしれません。歯や口の痛みは外から見えにくく、気づいた時には進行していることもあります。違和感を感じた際は早めに動物病院を受診してあげてください。
副食(昆虫・おやつ)
ハリネズミはミルワームやコオロギなどの昆虫が好きな子が多いですが、与えすぎは肥満や消化不良の原因になります。ハリネズミ専用フードを主食に、副食として適度に与えてあげてください。食欲が落ちた時の食欲刺激に役立つこともあります。
肥満に注意!
ハリネズミは丸い体が特徴ですが、その愛らしさゆえに太っていることに気づきにくい動物でもあります。(私の体感では、来院されたハリネズミさんの6〜7割は肥満体型です)
夜行性で運動量が把握しにくいことに加え、ミルワームなど高脂肪のおやつを好むため体重が増えやすくなります。運動不足やケージ環境の影響も肥満の一因です。太りすぎると脂肪肝や関節への負担などの健康トラブルが起こりやすくなるため、体重チェックとおやつ量の管理が大切です。
水分
水分不足は体調不良につながるので、きれいな水をいつでも飲める環境が大切です。体調や季節で飲む量は変わるため、普段より減っていないかチェックしましょう。ミネラルウォーターの方がいいですか?とご相談を受けることがありますが、通常の水道水で問題ありません。
3. トイレ・衛生管理
ハリネズミは決まった場所で排泄する習性が強くはないですが、なかにはトイレを覚えられる子もいます。回し車を使うタイミングで排泄する子も多いです。もしトイレが上手に使えなくても、汚れた場所をその都度きれいにしてあげれば快適な環境を保てます。
赤い尿が出たら
メスのハリネズミで赤い尿が出た場合、私の経験上ほとんどが子宮内膜過形成や子宮腺癌などといった子宮の病気です。初期のうちは元気や食欲があることもありますが、進行すると重度の貧血を起こす場合もあります。また、子宮疾患の他にも、頻度は多くないですが膀胱炎や尿石症による血尿の可能性もあります。赤い尿が見られた場合は早めに病院を受診してください。
緑の便が出たら
ハリネズミで緑色の便が出た場合、しばらく十分に食べられていない可能性が考えられます。食餌量が極端に減ると胆汁が混じり、軟らかい緑色の便になります。食欲低下やうまく食べられない状態が隠れていることもあるため、動物病院へご相談ください。
4. ハリネズミに必要な日常ケア
爪切り
ハリネズミの爪は伸びすぎると歩きづらく、引っかかって怪我をしたり、折れて出血することがあります。排泄物が爪の間に挟まってしまうこともあるので、月1回ほどを目安に爪切りをしましょう。
ハリネズミの爪切りはコツが必要なため、自宅でできないことも多いです。
当院では、爪切りだけでのご来院もお受けしております。
針・皮膚のチェック
針抜けが多い、フケが出ている、皮膚に赤みがあるといった場合、ダニや真菌といった皮膚病が隠れている可能性があります。掃除や触れ合いの時間を利用して、日常的に確認してあげましょう。
毎日できる健康チェック
毎日のちょっとした気づきが、大きなトラブルの早期発見になります。
- ごはんの食べ方はいつも通り?
- おしっこの色や量にちがいは?
- うんちの硬さや色は変わっていない?
- 落ちている針がいつもより多くない?
- 普段より元気がない、落ち着かないなど行動の変化は?
などといった“いつもと違うな”と感じることがあれば、すぐにご相談ください。
ハリネズミがかかりやすい病気
ハリネズミに多い病気
※詳細は追って別コラムでご紹介します
- 皮膚病(ダニ・真菌など)
- 口腔内の病気(歯肉炎・扁平上皮癌)
- 子宮疾患(メス)
- 腫瘍
- 肥満
- ふらつき症候群(WHS)
などがあります。「いつもと違う」と感じたら、早めに動物病院へ相談しましょう。当院では、体調に変化があるときだけでなく、健康なときにもハリネズミの定期的な健康診断をおすすめしています。